I. サンプリングレートコンバータとは?
アップコンバーターSRC2496
DEQ2496の絶大なる成功に味を占め、なにかベリンガー製で他によい製品はないかと物色していたところ、SRC2496という商品を見つけました。ごく地味に、デジタル機器の接続問題を解決する機器、というように紹介されていますが、オーディオ的に言いますと、サンプリングレートのアップコンバーターです。
例えば44.1kHzのCDドライブの出力を最大で96kHzにコンバートしてDACに送ることができます。
アップコンバートとオーバーサンプリングはなにが違うか
CDプレーヤーではオーバーサンプリングはもはや常識。しかしそれとは別に「アップサンプリングをします」というCDプレーヤーが昨今話題です。この両者の重大な違いは、アップサンプリングでは、入力と出力のジタルデータのクロックが同期していないことです。
通常はデジタルクロックを検知して、入出力は同じクロックで同期します。その上で、サンプリングとサンプリングの間を補完して信号を入れていくことでサンプリングレートを上げるのがオーバーサンプリング。当然、整数倍にしかできません。
サンプリングレートコンバーター(以下SRC)では、入出力のクロックは別です。だから入力が44.1kHzに対して、出力がその整数倍でない96kHzとか48kHzに変換することもできる。したければ32kHzに下げることもできる。
大事な点は、仮に44.1kHzを同じ44.1kHzで出力しても、入力と出力は同期していないということです。
例えば、入力のデジタルデータが一瞬途切れても、出力は44.1kHzで出たままです。だから複数のデジタル機器、しかもサンプリングレードも違う機器(44.1kHzのCDと48kHzのDATとか)などでも、一緒に編集が可能なのです。これがPA機器としてのSRC2496の本来の役割です。
同期していないことの意味は以外に理解されていないことが多い
例えば、時々見かける説: CDの44.1kHzをアップコンバートする場合、整数倍である88.2kHzのほうが96kHzより精度よくコンバートできる(はずだ)という説。
サンプリングレートの変換で音が異なるのは不思議はないです。それが良いと感じるのは個人の自由です。
しかし、上記のとおり、44.1kHzを44.1kHzでサンプリングした場合でも、入力信号のパルスと同じタイミングでサンプリングしている可能性はほぼゼロです。スタートが半周期狂っていれば、入力のパルスとパルスの中間での補間値をいつもサンプリングしているかもしれない。アップコンバータは、それが可能なように、入力のデジタル信号を、一旦、関数補間し、それを「別のクロックで」再度サンプリングするのです。変換精度や音はほとんどこの補間で決まる。だからCDの整数倍の88.2kHzが精度が高い理由は何もなく、しいて言えば、88.2kHzと96kHzの音の違いを楽しめる、という程度。確かに音は違います。とはいえ、元データにないものが出てくるわけではないですが。
オーディオ的には同期していないと何が良いのか
それは、よく言われるジッターの影響を一旦ここで切れるからです。バッファーメモリーに一旦貯めてから出力するというDAC64の場合もジッターを切るのが目的でしたが、数秒の時間差が出るのが大いに問題。その点、アップサンプリングなら時間差なしで同じようにジッターを切れることになります。
II. SRC2496による音の変化
で、結局、SRC2496の導入結果はどうだったか、です。
DEQ2496の前に入れる(普通はこうするでしょうね)、DEQ2496の後に入れる、の両方を試しました。どちらの場合も、同じ傾向の変化です。
これはですね、実は結論を出すのが非常に難しかった。
要するに音が変わる。
DEQ2496は、間に入れても特性フラットでは音の差を認識できなかったけれど、SRC2496は、間に入れて、しかも44.1kHzで出力しても、確実に音が変る(理由は上記の通りで、別に不思議ではない)。
48kHz、88.1kHz、96kHzでもそれぞれ変る。しかし、SRC2496を入れた音の変化は基本的には同じ方向といえる。
だったら駄目なのかというとそうでもない。 だって、音の変化を期待してSRC2496をいれるわけですから、変らないのが理想のイコライザーDEQ2496とは意味が違うわけです。音がひずむとか、汚れるとかなら駄目ですが、そういうことは一切なく、ある方向に音が変る。それは、大体の感じですが、「高域が繊細な感じに、かつ、中域はうるさい感じが減る」。これはDEQ2496の特性をいじっても同じことは決してできない変化です。
だから、DAC64では少しうるさいなと思っていたCDが、SRC2496を入れると美しく聴きやすい。弦楽器が驚異的に美しい音に変ることもある。
だったら問題ないじゃないの、それぞれの音を使い分ければ・・・・。 ところがです。私の場合に限っては、そうともいえないのです。上記の変化は、まさしく、DAC64からマークレビンソンNo.36SLに切り替えたときの音の変化にそっくりではありませんか。SRC2496は、DAC64をNo.36SLに化けさせる機材なのです。ただし、低域はNo.36SLのほうが迫力が出ます。
そして私の下した今の段階の結論は:
マークレビンソンNo.36SLが手元にある限り、SRC2496は不要であると結論しました。しかし、もし、マークレビンソンNo.36SLがないなら、これは驚くべきコストパフォーマンスの機材だといえるとは思います。
もちろん、上記は、DAC64とSRC2496と組んだときの話であって、どんなDACとSRC2496を組合わせても、それがマークレビンソンの音になる、と言っているわけではないです。言うまでもないですが、念のため・・・。
実際、SRC2496内蔵のDACで聞くと、DAC64とはさすがに差がでます。まあ、それは、そうでなくてはオーディオファンとしては困りますよね。なにしろ、このSRC2496の価格は2万円以下なのですから。
SRC2496のDACは、低音が軽くなるのが、私からみれば弱点かな。これはDEQ2496も同じ傾向でした。分解能は優秀。コストを考えると、この内蔵DACも非常に音が良いと評価するのが正しいと思います。
上記の結論に沿って、今はSRC2496は取り外し、従来とおりのDEQ2496とDAC64の二段重ねに戻しました。ま、また使い道を思いつくかもしれないので、手元には置いておきます。
P.S. アナログを再生するときに使っているD-07aのADコンバータとSRC2496のADコンバータを入れ替えて見ることもやって見ましたが、これは全然駄目でした。アナログは、D-07aでデジタル化したときの音が驚異的に良いのです。不思議ですね。オーディオって。
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