理想像 癒し それとも毒…「家政婦のミタ」大ヒットのウラにあるもの
2011/12/22 スポニチ
寡黙で無表情、不気味な雰囲気。でも仕事は完璧なプロ―。風変わりなヒロイン像を打ち出したドラマ「家政婦のミタ」(日本テレビ系)が最終回で平均視聴率40%に達した。大ヒットした背景には何があるのか?
「承知しました」「それは業務命令ですか」
ドラマの舞台は、夫の浮気を理由に妻が自殺し、家族の気持ちがばらばらになったサラリーマン家庭。松嶋菜々子が演じる家政婦の三田灯は家事だけでなく、「家を燃やして」という無理難題を命じられても淡々とこなそうとする。
三田には独自の行動基準がある。大平太プロデューサーは「日本全体が軟弱化する中、誰に対しても信念を貫く三田は一つの理想像になっている」と胸を張る。
放送評論家の藤久ミネ氏は、他人との深い関わりを敬遠するムードがヒットの背景にあるとみる。「親切な人と付き合うのはとかく面倒だったりするが、三田にはそういうところがない。細かい配慮が不要な彼女のような人こそが都合がいい存在なのではないか」。
ドラマの分析が専門の日大芸術学部の中町綾子教授は「感情を殺して生きている理由も視聴者に伝わった。でも、そもそも情感たっぷりの演技というのはリアルではないんです。現実を生きる人間は、そんなに感情を表に出さない」と指摘する。
「三田は日常の中に入り込んだエイリアン。家族の病根を客観的に映し出す鏡の役割と、黙って話を聞くという癒やしの役割の両方を担っている」と分析するのは、家族の崩壊と再生を描いた名作「岸辺のアルバム」を演出した大山勝美氏。
大山さんがヒットの理由に挙げたのは「毒」。いじめやいやがらせ、親の身勝手さなど、人間の中に潜む悪意や弱さを容赦なく描く。
「優等生的なドラマが求められた東日本大震災から半年以上たち、毒がある作品も支持されるようになった。日常の持っている病巣を映しつつ、救いの方向を示唆しているから、受けているのだと思います」。
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